苗字の由来 苗字数 苗字大辞典 苗字大辞典・追補 苗字はおもしろい  地名と苗字 改版記録
地名と苗字(苗字の由来)
   苗字は、85%の苗字が地名に由来すると言われております。
   武家や公家の苗字(6%)は、「85%の苗字が地名に由来する」正しい表現と思われます。
   一般の人々の苗字(94%)は、その由来について不明と考えるべきと思われます。 

 まえがき
   「日本苗字大辞典」で、85%の苗字が地名に由来すると記述されております。
   苗字調査を実施した過程で、こんなに多数あるとは思えませんでした。(小生は1%程度と思っています)
    (土地に由来する苗字は、「由来する土地には存在せず、その近郊に存在する」との説もあります)

   85%の根拠に関する、資料を物色しましたら、姓氏・家系・家紋の調べ方(新人物往来記(丹羽基二)がありました。
   土地に由来するかどうかについて、その「確証」をとることは困難と思います。
   85%ならば、”私の苗字は××地名に由来します”と言う人々が多数いても良いと思いますが、聞いたことがありません。
     (”私の苗字は、××地方に多く、父(祖父)がその地方の出身です”は、良く聞くと思います)

−−−−−−−  以下は、姓氏・家系・家紋の調べ方の内容の抜粋です  −−−−−−−  
 1 地名の消失と古代姓氏
 1-1)日本霊異記の地名消失率
   平安の初期に編まれた説話集だから約1150年の星霜を経ている。ここに地名約60ある。
   郷・里・村で現在消失していまったものが34カ所、存在地名は26カ所。 {コメント・注:地名消失率56.6%
     現在の姓氏に検出しうる地名  (○44カ所)
     現在の姓氏と同形の地名    (△ 8カ所)
     現在の姓氏に検出できない地名(× 8カ所)
   これでみると、古代地名は、いまも7割以上(○と△とを合わせると86.6%)は苗字に残っている

 1-2)「万葉集」の地名消失率
   万葉集から地名を総計してみると、1070あることがわかった。 
   この中で、現在消失している地名を数えると、消失地名120 消失率19.5
   万葉集が世に出て1200年以上になるのに、地名消失率が2割以下とはよく保存されていたことがわかる。

 1-3)「和名抄」の地名消失率
   十世紀に出た日本最古の地名辞典。
   この書は、日本66カ所2島にわたり、国・郡別に約4000の郷名が網羅され、里と駅が添えられている。
○(残) ×(消失) 消失率
345 247 592 42%
925 2739 3664 75%
1270 2986 4256 70%
  この調査を「国土地理院」の2万5000分の1の地図で実行すれば、消失率は多少低下するものと推測するが、その割合を
  10%とみつもっても、消失推定率は60。 1000年たつと日本の地名は約6割消失することが予測される。

 1-4)「新撰姓氏録」の姓氏と地名
    古代の近畿諸氏の系譜を集成したものとして著名。弘仁6年(815)に成立したものだが、京・山城・大和・摂津・河内
    の1182氏の系譜を列挙した。   (注記:1182氏から再出の姓氏等は省いて、536氏で調査していますね)
姓氏の種類
地(地名姓) 370 69.0
職(職名姓) 104 19.4
事(事象姓) 16 3.0
物(物建姓) 13 2.4
名(人名姓) 19 3.5
不(不明姓) 14 2.6
536 100.0
   なお、地名以外の姓氏の中できわめて地名姓に近いものをあげれば(たとえば高橋)、18氏は確実に挙げられる。
   もしそれを加えれば、地名姓は72.4%     (注記:(370+18)/536=72.4% ですね)
   これでみると、古代姓氏の約7割以上は地名から来ていることがわかる。地名から来ていなくても、同名の地名は
      このほかに多数ある。これらを算入すれば8割以上になることは確実である。
    (注記:地名由来が、69〜72.4%のデータを示しながら、推定で8割と飛躍していますね)

 2 中世以後の地名と姓氏
 2-1)「吾妻鏡」地名と姓氏(P238〜239抜粋)
     「吾妻鏡」に、地名の数が2841でてくる。
     この中から姓氏調査に必要なものを拾い、純粋な地名だけを数えると、1104になる。
     それと同じ姓氏を「姓氏辞典」で検出してみると、その数は936その割合は84.8%になる。
 <「吾妻鏡」は鎌倉初中期の武士が地方に封土をもらって移住し、幕府に武士の名字を認知してもらわなければならなかった。
   これらの封土には、それぞれの名がある。この「名を字として」名乗り自己の支配の証とした。 これが名字である。>

 2-2)「寛政重修諸家譜」の姓氏と地名(P239〜240抜粋)
     江戸初期の「寛永諸家系図伝」を寛政11年(1799)に増改修したぼう大な諸家系譜で計1114氏、2133家ある。
     いわば、江戸期の代表的姓氏辞典といってよい。
     この姓氏の中に地名と重なっているものがどのくらいあるかを調査してみた。
     地名にないものの数は122氏、その割合は10.95%。のこりの89.05%はみな地名に見られる。
     この戦国以後の武家は、ほとんどが同地名をもっていることになる。
     このばあい苗字から地名がおこったものも少しはあるが、ほとんど地名からおこったとみるほうが正しい。

 2-3)「雲上明覧大全」
   西本願寺光徳編集で、天保8年(1837)に初版が刊行された公家の称号録。下巻の堂上公家を調べた。
   (一)地名からでた称号      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 96家(72.2%)
   (二)地名になっている称号、または地名ときわめて関係の深い称号・・・・・・・・・・・・・・ 16家
   (三)地名以外または不詳の称号 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  21家
                     計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  133家
      (一)(二)を加えると112家で84.2%は地名にきわめて関係が深いことがわかる。

 2-4)栃木県の地名と姓氏(P244抜粋)
    国土地理院の5万分の1の地図であたり、地名を総点検すると、5949ある。 その中から夾雑物を除いて数えてみた。
   その数は4356となる。
   姓氏にある地名を拾ってみると、3504、割合は80.4%

 2-5)沖縄県の地名と姓氏   (内容省略)

  「地名・姓氏共通の名称の表」について
  表1 地名から姓氏を見る
資料 地名 同名称の姓氏 パーセント 須アのコメント
1-1) 日本霊異記 (822年) 60 43 71.7 本文では44の姓氏が一致と書かれている
2-1) 吾妻鏡    (1300年頃) 1104 936 84.8
2-4) 栃木県の地名 (現代) 4356 3504 80.4

  表2 姓氏から地名を見る
資料 姓氏 同地名 パーセント
1-4) 新撰姓氏録   (815年) 536 370 69.0
2-2) 寛政重修諸家譜(1799年) 1114 992 89.0
2-3) 雲上明覧    (1837年) 133 96 72.2

以上の2つの表から、現代に近づくにつれて、地名・姓氏の重なる割合は増大し、約80〜90パーセントにおよぶことがわかる。

 3 日本の地名の総数と使用文字の調査
 3-1)地名の推定
   奈良県の地名が収録されていた「大和地名大辞典」がある。
      これによると、小字以下の小地名まで含めると約15万近くある。
   これらの半分の75,000とみつもり、全国(1道1都2府43県))では、1057万5000となる。(結論では約2000万と記述)

 3-2)姓氏に多く用いられる文字
順位 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
漢字
   佐久間英氏の「日本に多い姓氏5千傑順位表」を用いた。その漢字を1文字ずつ拾って姓氏の数を掛けて総計。

   これをみると、田のつく姓が圧倒的に多く、続いて藤、これは佐藤、斎藤、加藤をはじめ、藤のつく姓が日本にはきわめて
   多いからである。
   次いで、山と野。これは日本の国が山野にかこまれている証拠。川は人間生活の中心地として離れることはできない。

 3-3)地名と姓氏に多用される文字の比較
順位 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
地名
姓氏

   田や川や山や野などはすべて上位でほとんど一致している。
    地名・姓氏に用いられる文字は、人間生活にもっとも関係の深い文字で、やはり両者は軌を一にしていることがわかる。
    
−−−−−−−  以上は、「姓氏・家系・家紋の調べ方」の内容の抜粋です  −−−−−−− 
 4 まとめ
 1-1)日本霊異記の地名消失率
     地名約60に対し、苗字44が残っている。
        古代地名は、いまも7割以上(○と△とを合わせると86.6%)は苗字に残っている。
     地名は26カ所が残っている (消失は34カ所 消失率56.6%
 1-2)「万葉集」の地名消失率
     地名1070に対して、1058の地名が残っている。 (消失地名120 消失率19.5%
 1-3)「和名抄」の地名消失率
     地名4256に対して、1270の地名が残っている。 (消失地名2986 消失率70.1%
    「国土地理院」の2万5000分の1の地図で補正すれば、1000年たつと日本の地名は約6割消失することが予測される
  コメント:(苗字とは関係ないが)地名が6割も消失するとは、思われません。

 1-4)「新撰姓氏録」の姓氏と地名
     京・山城・大和・摂津・河内の1182氏について、地(地名姓)370で69%。
        地名姓に近いものを加えれば、地名姓は72.4%

 2-1)中世以後の地名と姓氏
   「吾妻鏡」の武士の苗字について調査して、土地に由来する苗字は85%の数値が得られた。
 2-2)「寛政重修諸家譜」の姓氏と地名
   寛政11年(1799)の武士の苗字について調査して、土地に由来する苗字は89%の数値が得られている。
 2-3)「雲上明覧大全」
   公家の称号133家で、112家で84.2%は地名にきわめて関係が深い。
 2-4)栃木県の地名と姓氏
   地名4356で、姓氏にある地名を拾ってみると、3504、割合は80.4%

 3-1)地名の推定  ・・・・・・・  全国の地名は1,000〜2,000万ある。 (コメント:種類で、こんなにあるのかな)
 3-2)姓氏に多く用いられる文字  
   この表からは、苗字の漢字は地名の漢字(10傑)で6割が一致しないと言っているようにも受けとられます。 
 3-3)地名と姓氏に多用される文字の比較
   田や川や山や野などはすべて上位でほとんど一致している。
      地名・姓氏に用いられる文字は、人間生活にもっとも関係の深い文字で、
   やはり両者は軌を一にしていることがわかる。  <=この4種だけで、地名から苗字が由来するとは、思われません。

5 考察(当HP)
 1)武士や公家のデータで、土地由来する苗字は、72.4%〜89%であることから、「85%の苗字が地名に由来する」
      と言われている。
   ここで使用されたデータは、武士や公家のデータであり全国の人々の6%程度が該当する。 
   他の94%一般の人々(農民等)も土地に由来するとするかは疑問と思われます。
   
 2)地名消失率は、1000年で約6割が消滅すると言いながら、現在地名が2000万もあるとは、不思議である。 
   地名は消えても、地名に由来する苗字は残るとは、また不思議です。

 3)地名も苗字も2文字構成が多いので、概略一致すると思われます。

 4)苗字は、地名に由来するならば、地名の数の苗字数があっても良いだろうが、
   苗字数(10万種)は地名(2000万)の100分の1程度 である。
   地名・姓氏は、独立(または同時)に付けられたと考えるのが自然と思います。

   武家や公家の苗字(6%)は、「85%の苗字が地名に由来する」 と考えるのが妥当と思われます。
   一般の人々の苗字(94%)は、その由来について不明であるが、正しいことと思います。 
     (一般の人々が、武家や公家の苗字の由来につながるとは、思えません)